2014年4月28日月曜日

芥子坊主の桜


芥子坊主の桜はこの日が満開で、散り始めの樹もあるぐらいだった。芥子坊主山というのは僕のまちの裏山で、国道254の松本トンネルの上にある丘のような高まりだ。標高は892m、てっぺんの展望台からは松本市街地や北アの山並みを見晴るかすことが出来る。

我が家から大豆と小豆と三人で、チャリを漕ぐ。1キロ程山寄りの塩倉池というため池の畔まで、はぁはぁ言いながらやって来た。池の畔にチャリをデポすると、燕が盛んに飛び交っていた。

春の野歩き。ワラビを摘みながら、あれこれと他愛もない会話を重ねながら、少しずつ登って行く。

芥子坊主山のてっぺん付近は、公園になっている。野営場もあって、この日はBBQ組も何組か。







春霞の向こうに、常念。まだたっぷりの雪。



湯を沸かしカップラーメンを腹に収めて、小枝や切り株で遊んで帰路に着く。ちょっと冒険したい、という豆どもの意向で、薮漕ぎのある下降ルートを取る。


おや。君は...。

指先に激しい痛みを感じながらも、春の芽吹きの恵みを頂く。帰ったら、天ぷらじゃ。
























2014年4月27日日曜日

どろんこ大豆

うちの坊主の大豆(ソイ、長男)も10歳になりやがった。
日曜日の午後の過ごし方を相談している折り、父が「芥子坊主山でラーメン」と提案すると、「トランギアおれにやらせて」と要求。これにはアルコールストーブを扱わせろ、という意味の他に、ガス缶でスパイダーでは嫌だと言っている。アルスト派なのだ。

生意気になってきたな。

父親としてはそこにたくましさを感じながらも、きのうハードディスクの奥底から見つけてしまった古い写真に、にやついてしまう。



大豆よ。
おまえがどれだけ立派になっても、この写真が残されていることを忘れるな。



鶏もも肉の醤油麹漬けグリル、ふんわり玉子焼き添え





















国産鶏もも肉を二枚。醤油麹を揉み込んでポリ袋に密封し、冷蔵庫に放り込んでおいた。放り込んでおいたのはよろしいのだが、忘れていた。次の週末まで。


数日間を眠ったもも肉は、腐敗することなく熟成されていた。






















焼いてやる。照明のせいでグリーンに被っているが、そのままアップする。























焼いてやる。こうして。肉汁をしたたらせ溢れさせ、さらにその肉汁の旨味をまとうがいい。こうしてやる。こうしてやる。




焼き上がりを、こうしてやる。

 
肉汁仕立ての玉子焼きも、ふんわり焼いてやる。巻いてやる。


喰らえ。喰らえ。

あ。弁当にも良いなこれ。
 
 
 
 
 

 
 


 
 
 
 
 
 
 
 











The Japan Alps.

























2014年4月25日金曜日

丘の上の静かな桜

僕が棲むまちと田園を隔てて、少し奥まった集落がある。ため池の畔に家々が集まったところで、なんとものどかな風景に惹かれていた。

ある日、散歩というか歩いて調べたい事柄があったので、この集落を訪れてみた。

ため池を囲むような車道を少し歩くと、目の前が丘になっていて大きなしだれ桜の樹が目立つ。お堂か何かがあるようだった。登り口に当たる階段脇の案内板にはここが古刹であること、信濃百番札所のひとつであったことなどが記されていた。



現在でも地形図にはお寺マークが記載されているが、訪れてみると古びたお堂が建つのみ。石灯籠、馬頭観音、墓地、そして堂宇の両脇のしだれ桜。ただし東側の樹は枯れてしまったのか伐られている。



ちょうど梅が満開で、桜のつぼみが膨らみはじめる頃だった。 うわあ、こんな立派なしだれ桜が左右に在ったら、凄い眺めだろうな。いや、一本でも花を咲かせた姿を眺めてみたいものだなあ。そんな印象を抱いた。


開花はまもなく時期を迎え、朝の出勤前に寄ってみることにした。

そりゃあ、凄いものだった。丘を登りながら、鳥肌が立つほどだった。

美ヶ原の南、扉峠のあたりから顔を出したお陽さまの光が、橙味がかった色合いに風景を染め上げていた。その光の中で、一本だけのしだれ桜は圧倒的な存在感で丘に君臨していた。風は絶え音も消え、ただ光の塊のような樹がそこに在った。


僕は数分感、腑抜けのように樹を見上げていた。そして十回めの「うわあ」という己の声でようやく写真を撮るというアイディアに辿り着いた。写真を撮りながら、あたりには誰も居ないことに気付く。時刻が早いためか、集落の人の姿もない。そうか、だからこんなにも静かなんだ






二日後。僕はめずらしく飲みに出かける。書斎でThe Specialsなんかを聴きながらの「部屋飲み」は毎夜のことだけど、外に出るのは年に数回もない。この夜は誘われて、松本城の国宝の天守閣を眺めながらぶらぶら歩いて、酒席に向っていた。





















天守閣には投光器が向けられていた。お堀端の満開のソメイヨシノにも、ライトアップ。夜桜を眺めに集った大勢の人々は、天守閣と頭上の桜を交互に眺めながら、盛んにフラッシュを焚いている。うわ賑やかだねここはお祭り騒ぎだね.... 




帰路。

それほど酔ってはいなかったので、またぶらぶらと街角の花を眺めながら歩く。深夜の路上には人影もなく、信号機の光だけが時間は止まっていないと教えてくれた。お祭り騒ぎのようなお城の桜も良かったけど、あの丘の上の一本のしだれ桜には、かなわない。どちらがどうという訳ではないけれど、音も風も絶え果てた丘の上で静かに咲いていたしだれ桜が、この春に出会えた最もうつくしい体験のひとつになるだろうと思った。









2014年4月21日月曜日

試しに投稿してみる

お。フォームの文字入力はこっちの方が軽いね。変な予測変換とか文字列チェックしてる気配はなさそうだけど。

 じゃあ続けてテスト。アップロードはwordpressよりやりやすいね。いい感じだ。
写真の表示サイズ変更もね。この川を上流へと辿るよ。


 カモシカが見ていた。

 さあどんどん上流へとやってまいりました。

 縦横自動判別してくれた。バイクを降りて沢へ下降。あ、これ支流の沢です。稜線方向は見えず。


 さて核心部が近づいてきましたよ。やっぱ文字入力の変換に難があるのはこっち側のFEPだな。とするとテキストエディタで書いてからコピペ。

 じゃじゃああああん。ここが源泉湧出地点です。あっついです。本流の水が流れ込むように工事します。


 もちろん、入浴ですよ。そのためにはるばる走ってきたんですから。

いやあ、良い湯でした。また来ようっと。ってこれ、2008年頃の野湯遊びでした。



2014年4月20日日曜日

ある春の日の、昼の酒

ろくに休みも取れず、春の山遊びにも出かけられず腐っていると、熊太郎の奴から連絡が来た。
熊太郎は以前に小屋番仲間だった奴で、名前の通りの野郎だ。その熊太郎、ある春の土曜日の朝っぱらから僕の電話を鳴らし、一時間後に待ち合わせようと言う。名前の通りの野郎だから断りも拒絶も通じることなく、僕らはお昼前の城下町を歩いていた。蕎麦屋か寿司屋があったら、そこで昼飯を兼ねて酌み交わそうというくわだてである。

しかし、蕎麦なり鮨なりで野郎の胃袋を満たすことを考えると、出費という点で気が重い。上握りを五人前ぐらいは覚悟しておこうか.... そこまで追い詰められていた僕らは、いや、追い詰められていたのは僕だけだが、松本の城下町の中町という通りに立っていた。電線は埋設され、両側に古い蔵づくりの店々が建ち並び、工芸品や郷土料理などといった商いをしている。四季を通じて観光客がそぞろ歩いている通りだ。



中西屋本店。
その辻のひとつに、蔵づくりの酒屋があるのを僕は知っていた。なぜなら数年間、朝夕この前を通って保育園への送り迎えをやってたからだ。そういえばあの酒屋、昼間っからお客が店先で飲んでた。常連には立ち飲みをさせるのだろうか? そうした記憶が甦り、思い切って覗いてみようとがらり戸を開けてみたのだ。

なにこれ最高。

熊太郎
熊太郎がくつろぐ店内の様子。
ちゃんとしたテーブルがあり、椅子まであり、清潔なコップが積み上げられている。奥には冷蔵庫に冷やされたビアもある。ウイスキーの瓶の量り売りもやってる。ラジオを聞いてた女将さんが快く迎えてくれた。
時計を見れば、間もなく正午だった。問えば、お昼から飲ませるよ、でももう良いよ。女将はそう言った。僕らは冷蔵庫から好みのビアを取り出し、柿の種とかベ ビーチーズとかそういうつまみを選んで女将に見せた。女将は、品物の定価を計算し、僕らは小銭を出して払った。ビアを重ねて日本酒に切り替え、焼酎やウイスキーを舐め始めた頃にはだいぶ酔ってきた。それでも二人で三千円ぐらいしか使っていない。なんと無駄のない飲み方だろうと、我ながら最高のチョイスが出 来たものだと良い気分だった。熊の野郎を酔わせるのに三千円。野郎はまだ飲むだろうから、それでも五千円もあれば足りるだろう。安いもんだ、けっ。

熊の野郎、腹が減ったと言い出す。熊に乾きものだけじゃダメか。

こうして僕らは、ほろ酔い以上、千鳥足未満という至福のコンディションで路上に戻った。実は僕だけは満ち足りていた。でも熊が腹減ったと言うし。さてもう一軒、カフェみたいなところでビアでも飲み直して....

僕の意識が伝わったのか、熊太郎が「シャンパン飲もうよシャンパン」といきなり斬りつけてきた。

うわなにお前熱あんの? 芋焼酎ぐらいしか飲まないくせに。しかし「シャンパンシャンパン」と五月蝿いことこの上ないので、やむなく一軒のカフェに席を取った。


「AU CRIEUR DE VIN」 ここは熊を連れてくるような店ではなく、可愛いあの娘と待ち合わせたり、和やかな午後を過ごしたりする場所だ。テーブルの向こう、あの娘の悩ましい視線に気付かない振りをする、そんな大人の僕に似合う店だ。
しかし野郎は、躊躇いも戸惑いもなく、自家製のパテとかチーズの盛り合わせとかを頼みはじめた。
自家製のパテ

チーズをつまむ熊
そしてプレミアムモルツを飲み干しながら、また騒ぎ始めた。
「シャンパンシャンパン、シャンパン」

ワ インリストを見ると、シャンパーニュの銘柄は見当たらなかった。が、ロワールのVouvray Sparkling "Bredif Brut"(ヴーヴレイ・スパークリング・ブレディフ・ブリュット)がある。おお、これはなかなかしっかりした好みのスパークリングだ。

これに合わせたひと皿は.... おお、黒潮洗う伊勢志摩の海が育んだ、牡蛎。
オイスター
生でも、とあったが蒸し焼きにしてもらう。ぷるんぷるんのぶるんぶるんに張りつめた身は、鶏卵大。頬張るとその身から溢れ出たジュースが、海の恵みが響きわたり奏でられる。

その瞬間。眼がくらむ。

なぜか視神経をねじられたような錯覚が後頭部を疾る。こんな、意識が遠のく程の味わいに身を委ねながら、ロワール、ヴーヴレイのグラスを傾ける。ふたたび、 また意識が遠のく。味覚、嗅覚の、僕のデリケートなスイッチが全力で叩かれる。弾かれる。翻弄され突き上げられ押しつぶされ、僕は牡蛎とロワールに敗北した。


オイスターひと粒
ほら、あなたは勝てるだろうか?



夜の帳にはまだ早い。「築地市場食堂」へと移動。鮪の中落ち、真鯛の兜焼きなどを堪能し腹をくちくする。熊の野郎は現役の小屋番で、もうすぐ上高地からヘリコに乗せられて稜線近い小屋に飛ばされる。ヘリコから突き落された後は、何週間も雪を掘って雪を掘って、そして雪を捨てにいって、小屋を掘り出さなくて はならない。道にもステップを切ったりベンガラを撒いたり、夏が終わるまで降りて来る暇もない。だから新鮮な魚介を喰う必要があると力説している。

夕暮れを迎えたようだ。源池の「とんぼ」に行こう。あの綺麗な女将に(と書くには若いが)逢いたい。さらに杯を重ね、熊野郎は新鮮な魚介が、と言い続けている。その後、上土の「彗星倶楽部」へ移ってまた飲む。飲み過ぎて椅子から墜ちかけたりしながら、たしかもう一軒寄って歩いて帰った。この辺は記憶がないが、布団に 潜り込みながら午前三時を指した時計に、呆れたことを覚えている。正午前から午前二時ごろまで、延々と飲み続けたわけか。

貴重な休日を飲みつぶれて過ごすなんて、おいらもしあわせだわ。